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- 2023.05.27 Saturday
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加納朋子『無菌室より愛を込めて』文春文庫
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大好きな作家さんの闘病記。
彼女の文章と世界に惚れこんで数年経つと言うのに、所謂「中の人」自体にあまり興味のない私は、その来歴や人となりを全く知らない。インタビュー記事なども読んだ事がない。
にもかかわらず、100%ノンフィクションである闘病記を購入するに至ったのは、ある特別な思いから……などという大層な理由ではなく「まあ読んでみるか」という軽い気持ち。
著者がある病を患っていた事は、別の著書のあとがきから知っていた。なので「まあ読んでみるか」
読み終わった今では、そんなかるーい気持ちで読み始めてしまった事を後悔している。
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突然だが、私は寝る前の軽い読書、というものが苦手である。時間で切り上げる事が出来ないからだ。
キリの良いところで本を閉じればよいのだが、例えば移動中などのように時間制限がないせいか、どんどん読み進めてしまう。
本のチョイス次第では、気付いたら丑三つ時をとうに超えていた、なんて事もざらじゃない。
なので本を読みたいと思ったら、わざわざカフェに行くか、外出で電車を利用する時くらいしかないのだ。
自転車通勤の私に、通勤タイムを読書に使うなどという事は許されていない。危ない。
そんな理由で大学卒業以降、読書時間はすっかり奪われてしまった。
せめて休みのまえの日くらいは時間を気にせず読書がしたい!と思うのだが、なかなかどうして上手くいかない。
帰宅する、食事を摂る、入浴する、ベッドにダイブ、寝落ち。
病院の「休日前日」は大変混み合う。すると、仕事量が増える。イコール、とても疲れる。
正直なところ、ゆっくり読書なんてしてられっか!という心境だ。
積読。今現在、はじめてそういった状況に陥っている。
私にとっての「積読」とは「読み終わった本をついつい傍らに積み上げてしまう」の略だったのに。
話は逸れたが、この『無菌室より愛を込めて』も同じ運命を辿る予定だったのだ。
ところが最近、久しぶりに一時間程度電車に乗る機会があった。その為、往復2時間+朝食でカフェに滞在する時間分の本を選ぼうと思った時、手に取ったのがまさしくこれだった。
合計三日かけて、本日読了。長い感想をしたためる。
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物語は(実話だが)著者夫の体調不良から始まる。
しつこい咳風邪。それが感染し、悪化し、初めて病院を受診。中略するがその後貧血や咳やなんかが続き、検査の後に大病院へと紹介されることになる。
大病院での大掛かりな検査、緊急入院。その過程に主婦ならではの心配事や作家さんにしかわからない苦労が見受けられる。
が、あまりに活動的に準備を進めていて「いいから!いいから安静に!寝ててください!」と何度思った事か。
そんなこんなで著者は「重病人」として入院生活を送る。
「ある病気」は「白血病」であった。
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読み進めていくと人となりを全く知らなかった、から一転、とても身近な存在であるように思えてきた。
◇アニメ・漫画が好き(入院中、漫画を読んだりワンセグでアニメを見たり……『おおきく振りかぶって』『君に届け』『夢色パティシエール』etc.)
◇弟がいること(仲が良い様子が、羨ましい)
なんとなく、そう言った部分に親近感を覚えた。
その所為か感情移入しすぎてしまい、まるで自分が白血病で入院しているように錯覚してしまった。薬の副作用による諸々の体調不良……嘔吐であったり、体重減少であったり、味覚障害であったり。
生半可に麻酔や手術・抜糸経験があるせいで「一体あれの何十・何百倍の苦痛があるのだろう」と考え、在りもしない痛みに涙。
更には著者の家族や友人の聖人君子のような献身ぶりにも、色々な意味で涙。私は身内に、或いは友人にここまで献身的になれるだろうか?身内や友人は、私の為に動いてくれるのだろうか?
一方で、自身が末端の末端ながらも医療従事者であることから、看護師さんや介助士さん、果ては清掃員に至るまで「わかる」「うわあ大変そうだ」などと想像力を豊かにし過ぎてしまうことも多々あった。
現在働いているのはクリニックで外来の仕事ばかりなので、病棟勤務の方々の大変さや苦労はそれこそ想像しか出来ない。いつもお仕事、お疲れ様です。一言しか言えない。
癌センターへ通院・入院をする患者さんも少なくはない。知人の親もここへ通っていた。知らない場所ではない。だが詳しくはない。何の力にもなれないことが心苦しい。
……一体私は誰の目線に立っているんだ?
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過去に一度、父が適合者として骨髄移植を勝手に決めた事があった。
何処の誰だか知らない他人のために命を賭ける。母は反対していた。私も反対したかった。何でそんな大事なことを家族に相談も無く決めてしまったのかと。
様々なリスクがある、もしこうなった場合私たち家族はどうすれば良いのか?父は不要な心配と笑っていたが、普通は家族の同意の元で行うのではないか?
手術の日程はまだ決まらない。そう言う話だったので、いつどんな覚悟をすれば良いのかすらわからなかった。
だが、結果として移植手術は行われなかった。患者さんが、移植前に死亡した為だった。
決して喜ばしい結末ではない。その患者さんのご家族としても「せっかくドナーが見つかったのになぜ」と思われたに違いない。
「骨髄移植せずとも、化学療法で完治したのでもう大丈夫ですよ」なら心から安堵できたことだろう。
この件は未だに、少なくとも私の中では、頷くことも納得も出来なかった大事件として居座り続けている。
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そう言った諸々の事情から、感情移入しすぎ、ありとあらゆる想像を廻らせ、時には一々グーグル先生のお世話になり、回り道寄り道をしながら牛歩の如く読んでいた。
休日前の夜。つまり昨日。一気に半分は読んでしまおうとホットココアをお共に寝る前の軽い読書を試みた。
結局、四分の三程度までいったところで「早く退院したい(続きがとても気になる)けど、多分もう一時過ぎてるだろうし寝なければ」と断腸の思いで本を閉じる。
二時半だった。睡眠不足。
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今朝。
舞台は遂に、無菌室へ移る。
私の貧困な語彙力と文章能力ではどう表現すべきか……。
薬の量が凄まじい。ずっと点滴(カテーテル)していて大変そう。
なのに、経口で食事を摂る努力をされていてすごい。体調の良い時には運動までされている。
副作用がヤバい。致死量の抗がん剤?何それ死ぬじゃん。
当然ながら、若いお嬢さんから出産直後のお母さんからご高齢のご婦人まで、様々な人達が白血病、癌という病と闘っている。
誰しもが助かるわけではない。誰しもが死に至るわけでもない。
入院中も、退院後も、死の恐怖が付き纏う。
手術に失敗したら、病の進行が早く間に合わなかったら、感染症になったら。
完全なる第三者が感じる恐怖の、何千倍もの恐怖と今尚闘っているのだろうか。
白血病とは、癌とは、そう言う病なのである。
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ドナー日記として、著者の弟が綴った記録が一部掲載されている。
淡々と事実のみが記されていて、非常に参考になる内容だった。一部と言わず全て公開して下さいと諭吉何人でもを差し出したいところ。
もし、また父が何処かの誰かのドナーになる日が来たら。
その時は、出来る限り反対せず、父もお相手の方も無事に手術が終えられるよう、ドナーの家族に出来る事をしたいと思う。
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闘病の闘病らしい記録もさることながら、時折クスリと笑える描写があり、著者の明るい性格が窺える。
夫婦愛、家族愛、友愛……温かな愛が溢れていて、多くの人の並々ならぬ勇気と努力が心を揺さぶる。
けれどもやっぱりこれは闘病記で、難しい専門用語が並べば辛く苦しい症状に何日も悩まされ体中にチューブが繋がれ大量の薬液が体内を流れる。
文中、何度も登場した「幸運探し」という言葉。
フルマッチの血縁ドナーの存在、暖かい家族・友人の存在、そして著者自身の前向きで尋常ならざる努力。すべてがあったからこそ、彼女の今がある。
辛い中でちょっとした幸せを探せる事。例え病に侵された状況でなくとも、この姿勢は見習うべきではないだろうか。
時に悪い方向への「幸運探し」もされたが、この一冊を通し(本人も自負しているように)誰よりも元気があった。笑顔があった。
「ママがいないと炎が消えたように皆静かです」
著者のお子さんの言葉からも、普段からとても明るい人柄であるとわかる。
病は気から、ではないが、「病に打ち勝てる性格」というものは実際、大いにあるのだと思う。
著者は非常に「幸運」なことに、病に打ち勝てる性格であった。そして、環境・医術の進歩・タイミングすべてが彼女に味方した。
チープな言葉に言い換えてしまえば、人はそれを「運命」と呼ぶのだろう。
名が知られていながら割合の少ない白血病、その中でも更に稀有な遺伝子異常。過酷な運命に囚われながら、それでも彼女幸運であった。
その幸運が、この先ずっと続くことを願う。
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余談。
父方の祖父は十二指腸癌だった。初めはポリープ。癌となり、入退院を繰り返す。
暫く元気な様子であったが、病態が急変。
退院後に不自由なく生活出来るようにと設置された手すり、浴室の改装、介護用ベッドの購入も虚しく、夏に他界。
母方の祖父は、とある難病。一度皮膚癌の手術を受け、こちらは寛解。
茨城の方で隠居していたが、治療の為専門医がいる三郷市に転居。宣告されていた余命から数年過ぎていた。
誤飲性肺炎により、食道の筋肉固縮という急変。本人の希望により胃瘻はせず、自宅にて臨終。夏だった。
シリーズの一作目を借りて、読み終わりました。
短編連作のミステリで、すごく私好み。栞子さんかわいい。
頂き物の図書カードで、本を三冊購入しました。
化野燐(あだしの りん)著の「考古学探偵シリーズ」と言うもの。
読み始めるのは、再読中の「入江駒子シリーズ」が終わってからになりますが。
表紙を描いているのがイラストレーターのワカマツカオリで、正直ジャケ買いです。
さらっと一ページ目を読んでみると「ライトミステリ」というだけあって、軽く読めそうな文章。ラノベに近いのかな?
読書に感けている時間なんてないんだけど、勉強するより本読んでた方がずっと楽しいし。
『ささら さや』 著:加納朋子(幻冬舎文庫) 本日読了。
ストーリー序盤で突然事故死する主人公と思しき男。他人の体を借りてトラブルに巻き込まれた妻を助ける姿に「おおう、こういう系の話なのか……」と思ったが、読んでいくうちにどんどん引き込まれていった。
お気に入りは「待っている女」と「トワイライト・メッセンジャー」
すごく切ないのに、あったかくて、涙腺にぐっとくる感じ。